1、ヒプノセラピー 〜催眠によって潜在意識を探究する〜
- 渡邊真理乃
- 2021年12月31日
- 読了時間: 5分
更新日:2022年9月3日
セラピールーム アウロラです。
ヒプノセラピーをご存知でしょうか。
日本語に訳すと、退行催眠療法となります。
退行?催眠? なんだか怪しいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
非常に簡単に言い換えると、深いリラクゼーションによる集中状態になり、忘れていた過去を思い出すことで、抱えている問題に取り組む心理療法です。
世界的なベストセラー、ブライアン・L・ワイス博士の著書『前世療法』をお読みになった方には、前世療法と言った方が分かりやすいかもしれません。
前世?ますます怪しい…と思われるでしょうか?
こちらも非常に簡単に言い換えると、無意識(潜在意識)の中に埋もれている自分自身の『物語』です。
この『物語』は、前世もしくは過去生と言われるものの存在を信じたり、証明するためのものではありません。
あくまで一人一人の潜在意識の中にある、その人特有のストーリーのことを指していると考えて下さい。それを心理療法に活用しよう、というのがヒプノセラピーです。
催眠療法自体は、病院やクリニックで医師やセラピストによって施術される、効果的な心理療法のひとつとして認められています。
患者さんご自身の記憶にない幼少期の出来事やトラウマを、深い催眠状態で思い出すことによって、現在抱えている様々な症状が改善することは、専門家の間では広く知られていることです。
ヒプノセラピーでは、思い出す範囲を幼少期に限らず、母親の胎内にいる時、生まれる前、そして過去生と呼ばれる、その人特有の『物語』にまで広げています。従来の幼少期に留まらず、そのように範囲を広げることに、どんな意味があるのかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ここで少し心の仕組みについてお話ししたいと思います。
私たちが、自分の心で意識できるのは大体10%程だと言われています。残りの90%は無意識として、意識されずにいます。
これはどういうことかというと、例えば普段の生活の中で、考えたり、感じたり、思ったり、悩んだり、選択したり、決断したり等した時、自分が意識している心の動きの背後に、その何倍もの心の働きが、私たちに気づかれることなく存在している、ということです。この心の働きの領域を無意識、もしくは潜在意識と呼んでいます。
無意識に注目し、掘り下げてゆかれたのが、フロイトやユングなどの深層心理学者と呼ばれる方たちです。彼らの興した精神分析や分析心理学が主に扱うのは、意識(顕在意識とも言います)の背後に隠れた無意識(潜在意識)であり、そこに精神的な病の原因や治癒の可能性を見出し、無意識に取り組む様々な手法を生み出してきました。例えば、夢の解釈、共時性、自由連想法、能動的想像法などです。
また他の心理学者やセラピストの方々も、ドリームボディ、フォーカシング、NLP等、多様な視点から様々な手法を使って無意識にアプローチしており、多くの学派、流派が生まれています。意識の影に隠れた無意識に取り組むことの重要性があるからこそ、このような広がりが生じたと言えるでしょう。
さて、無意識に意識の光を当てる手段の一つとして使われるのが、催眠です。催眠という深くリラックスした集中状態では、普段の意識(顕在意識)では思い出せないことを思い出せたり、感じたり、理解することができるからです。
ヒプノセラピー(退行催眠療法)で明らかになる、無意識(潜在意識)の中にある各々の『物語』は、確かにそれぞれの人の中にあるという点で真実です。
その『物語』が、非常におもしろいことに、今自分が置かれている状況や抱えている問題の原因等を、分かりやすく説明してくれることがよくあるのです。
催眠による退行(過去へと戻ること)の対象を、幼少期に留めず、過去生という『物語』にまで広げることの意味は、ここにあります。
体験がないと理解するのが難しいことかもしれませんが、自分の中に、自分の知らない自分自身の『物語』があること、しかもそれが示唆に富み、現在の人生にとって意味深い気づきや学びを与えてくれるものであること。その『物語』を、催眠状態で『体験』することによって自分自身を理解するーこのように説明できるのではないかと感じています。
クライエントさんの潜在意識の中から出てきた物語が、臨床の中で、非常に役に立つことは数多く確かめられており、国内外で催眠療法に関する本は沢山出版されています。
冒頭に挙げたワイス博士の『前世療法』の他にも、J・L・ホイットン博士著『輪廻転生』、ロジャー・J・ウルガー博士著『「魂」の未完のドラマ』等、どの本も、ヒプノセラピーの実際を理解しやすい、実例豊富な内容となっています。
私自身、ヒプノセラピストになる以前はヒプノセラピーのクライエントであり、そこで体験したことが、現在のセラピストとしての方向性のベースとなっています。これからヒプノセラピーについて詳しく紹介してゆく予定ですが、まずは私自身がヒプノセラピーを受けた時の体験を具体例として挙げつつ、分かりやすく説明できたらと思います。
また、ヒプノセラピーはあくまで心理療法なので、クライエントさんの症状や抱えている問題が良い方向へ向かうこと、癒されることが第一であり、その為に使えるものはなんでも使いましょう、というスタンスが基本となっています。ですから、セラピスト、クライエント共に過去生の存在を信じている必要はありませんし、その存在を証明しようとするものでもありません。
無意識という未知を含む私たちの心を、謙虚に、誠実に、理解しようとする試みであり、自分の心を知りたいという切実な願いに応えるものでもあると感じています。
セラピールーム アウロラ

Comments