３、ヒプノセラピーの癒しの効果

ヒプノセラピー、催眠状態について、これまで説明してきましたが、今回はその癒しの効果について述べてみたいと思います。ヒプノセラピーのセッションによって様々な形の癒しや変化が起こりますが、特徴的なもののひとつに、セラピーを受けるタイミングがぴったり合えば、長年の症状や悩みが一度のセッションできれいに消えることがある、ということと思います。

私自身の、夜中に絶望しながら廊下を歩くという不可解な症状が一度のセッションで全くなくなってしまったことを前回の投稿で書きましたが、このようなことは珍しいことではありません。

具体例としてもう一つ、私の妹のケースを紹介したいと思います。

妹は、幼い時から、体が膨張するような体感覚、特に両手が膨らむという感覚に時々悩まされていたそうです。突然その感覚に襲われるらしく、なぜそんなことが起こるのか分からず、かなり気持ち悪い思いをしていたようです。一番古い記憶で幼稚園の時から、大人になってもその症状は続いていました。実際に病気などで体が膨張する症状があるというわけではないので、あくまで本人の体感覚であったようですが、その原因となるものも思い当たりません。私も妹にそのことを訴えられたことがありましたが、理由も分からないし、どうすることもできずじまいでした。

そのような中、姉である私がヒプノセラピーの勉強を始めます。妹は、練習台として私のセッションを受けることになりました。そのセッションの中で、この体の膨張感の原因となった場面に遭遇することになります。

セッション中に潜在意識から現れたのは、若い女性が運河に身を投げて自殺するシーンでした。当時、彼女は悩み事を抱えており、苦しんだ末に思い余って運河に身を投げたのでした。セッションでは、そのいきさつを丁寧に、しっかり見てゆきました。そして、身を投げたシーンの後、妹は催眠状態のまま、『体が膨張していく…気持ち悪い…』と苦しみ出しました。遺体が水を吸って膨らむ感覚を強烈に感じているようです。

ヒプノセラピーでは、このように辛い場面を生々しく体験することがあります。耐えられない時には、視点をすっと上に上げて、映画を見るように体験できますよ、もしくは、ビデオテープで早送りするように場面を飛ばすこともできますよ、と指示します。

私は妹が観音様に信仰を持っていることを知っていたので、『少し顔をあげてごらん、ほら、観音様が現れましたよ。』と誘導しました。すると、ちゃんと現れ、『笑っておられる。』のを感じたようなので、『観音様の癒しの光が全身を包んで癒してゆきます、体がどんどん元の状態に戻ってゆきます。』等と、しっかり暗示を入れてゆきました。すると、風船のように大きく膨らんでいた体が、徐々に戻ってゆき、とても楽になったそうです。ここでも時間をかけて丁寧に、しっかりと癒してゆきます。

人生を振り返り、妹は、自殺は間違っていた、という気づきを得たようです。自殺した後に、その当時の両親が悲しむ姿を見、自殺の動機とその結果を知り、また、そのことが、今生、生きている自分にどのような影響を与えているかを感じて、客観的に、自分の中にある、ある部分に対しての気づきを得た、と言えると思います。

『イメージが具体的な形をとって、自分自身の姿を客観的に見せた』とも、言えるかもしれません。

このように、一連の振り返りの中で、クライエントさんは、自分の人生全体を少し客観的に見渡して、理解する、という作業を行います。すると、その人生と今現在の人生がいかにリンクしているのかを知ることができます。

例えば、今まで不可解に思えた自分の行動パターンや習性、思い込み、思い癖、手放せない感情、繰り返される状況、変えられない現状、何かに対する中毒や執着や依存等の、本当の理由や原因を、振り返ったばかりの人生の中に見つけることがしばしばあります。

自分はどうしてこうなんだろう、なぜいつまで経っても変われないんだろう、等の思いを抱いていた方は、ちゃんとした意味のある理由や原因を見つけた時、自分を許せたり、受け入れたり、認めたり、今までと違った視点で自分自身を見ることがきるようになるようです。

このようにして、『理解によって受容が導かれる』という一連の流れを、セッションを通して幾度も目の当たりにしましたが、それはしばしば非常に感動的な、心動かされる場面であることが多いです。

もう知っていると思っていた当たり前の全てのことについて、今一度、新たな気持ちで理解しようとすることが、いかに大切なことか、思い知らされるような気がしています。

セラピールームアウロラ（退行催眠療法）

ヒプノセラピスト　渡邊　真理乃